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当初はポリイミドフィルムとPETフィルムだけ

フレキシブル基板が最初に実用化された1960年代、使えるベース材料は、ポリイミドフィルムとPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート)だけでした。歴史的には米国のデュポン社が、新たに発明した耐熱性ポリイミドフィルム”カプトン”の用途を開拓するために、フレキシブル基板を開発したとの経緯があります。

ただ、カプトンフィルムの価格は高かったために、材料メーカーはポリイミドの代わりになるような耐熱性樹脂の開発を試みましたが、事業レベルでは全て失敗で、市場から消えて行きました。しばらくは、耐熱性が必要なところにはポリイミドフィルム、耐熱性が必要ないところにはPETフィルムという住み分けが続きました。

ポリイミドの代わりはポリイミド

1990年頃から、より高性能のベースフィルムを求める動きが出てきましたが、結局”カプトン”に置き換わるような性能を持ったフィルムは、やはりポリイミドフィルムでした。まず、日本の宇部興産社がカプトンよりも耐熱性が高く、寸法安定性に優れたユーピレックスフィルムを開発実用化すると、デュポン社はそれまでのHタイプよりも高性能のEタイプを開発商品化しました。また、鐘淵化学社も同等品のポリイミドフィルムを上市し、しばらくは3社の寡占状態が続くことになります。

並行して、銅箔の上にキャスティング法でベース層を形成して、一気に銅張積層板を製作する方法が開発実用化されましたが、ここで使われた樹脂もポリイミドでした。

いろいろな樹脂材料の試みもありましたが、現在でもフレキシブル基板用のベース材料といえば、高信頼性用途のポリイミドフィルムと、廉価品のPETフィルム

という構図は変わっていません。ただし、ポリイミド樹脂の内容は次第に新しいタイプのものに変わってきています。

新しい材料を使う例、伝統材料を見直す動き

2000年代に入ると、新用途としてポリイミドフィルムに代わる新しい樹脂を使う試みが出てきています。量的にはまだわずかですが、用途が増大すれば、今後市場が大きくなる可能性があります。主なものに次のようなものがあります。

・液晶ポリマー(LCP)フィルム:高周波回路用

・PEEK(ポリエーテルエーテルケトン):生体埋め込みデバイス用

・PEN(ポリエチレンナフタレート):光学デバイス用

最近フレキシブルエレクトロニクスの新しい展開により、従来の伝統材料を、フレキシブルデバイスのベース材料に使おうとする動きが多くなっています。例えば次のような例があります。

・紙:使い捨てタイプの血液検査デバイス

・布: 通気性と伸縮性が必要なセンサーデバイス

・ゴムシート:絆創膏タイプのRFデバイス

銅箔は常にプリント基板の主要材料

銅は銀に次いで電気抵抗が小さい金属のため、電気導体材料として広く使われています。しかも柔軟性が高いので、薄い銅箔にして、プリント基板の標準的な導体材料になっています。一般的に使われている銅箔は電解めっきプロセスで製作されるので電解銅箔と呼ばれます。

電解銅箔には裏表があり、おもて面が平滑なのに対して、裏面には微細な凹凸があります。接着には凹凸があったほうが良いので、通常は裏面にベース材料を接着します。

フレキシブル基板では多少違いが

電解銅箔はフレキシブル基板でも導体材料として広く使われていますが、機械的に脆いので、繰り返し屈曲するような用途には圧延銅箔が使われます。圧延銅箔は両面とも平滑なので、微細回路をエッチング加工するのにも適しています。ただし、コストは高くなってしまいます。

フレキシブル基板では、稀にアルミニウム箔が使われることがあります。ただし、アルミニウムの化学エッチングプロセスは、銅箔とは違っているので、専用のエッチングラインを用意しなければなりません。

導体の形成方法、特殊導体

最近は超微細回路や多層回路の製造工程で、アディティブプロセスやセミアディティブプロセスが使われることが多くなっています。導体はめっきプロセスで形成します。したがって、導体の機械的な特性は、銅箔とは若干違ってくるので、留意する必要があります。

また、スパッタリングと電気めっきを組み合わせて銅張積層板を直接製造する

プロセスも実用化されていて、ディスプレイのドライバーモジュールなどに大量に使われています。

特殊なフレキシブル基板では、特殊な金属箔が使われることがあります。主に導体の機械的特性を変えることが目的で、ステンレススチール箔や、銅合金箔などが使われています。

最近印刷で電子回路を形成するプリンタブル・エレクトロニクスが話題になっていますが、ここでは銀、銅、グラファイトなどの微粉末のインクが導体として使われています。このような電子回路を厚膜回路と呼んでいます。詳しくは、厚膜回路の章で説明します。

投稿者
  • 沼倉研史

    プリント基板の技術情報メディア「@ele」で、フレキシブル基板の材料・構造・実装技術について基礎から解説する記事を担当。連載「基板の常識(フレキ)」では、補強板の材料選定やポリイミドとPETの使い分けなど、設計・製造の現場で判断が必要になる論点を初学者にも分かるかたちで整理している。茨城大学大学院工学研究科修了。フレキシブル基板分野の著書多数。

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